長引く咳の風邪薬にも穏やかな精神安定剤にも使う漢方薬、半夏厚朴湯

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この記事を書いた人

清水みゆき
漢方薬・生薬認定薬剤師およびJAMHA認定ハーバルセラピストの資格を持つ専門家。
大学院卒業後、製薬企業の研究職を経て、現在は漢方調剤薬局に勤務。
漢方とハーブの知識を活かして自然の力で健康づくりをサポートする活動をしています。

勤務先の漢方調剤薬局でのできごとです。

風邪をひいてしまった患者さん。
いつも飲んでいる漢方薬はお休みして、
風邪のための漢方薬をしばらく飲んでいました。

漢方薬で発熱やのどの痛みは改善したものの、
なんとなくすっきりしない状態が続いていました。

「咳き込むことはなくなったけど、
痰がのどにはりつくような感じがのこっているんです。」
と、すっきりしない表情でおっしゃっていました。

長引く咳にも、おだやかな安定剤としても使われる半夏厚朴湯

例えば、頭痛、生理痛といった気になる症状や
胃腸が弱い、冷え性などの体質改善に、
毎日続けて漢方薬を飲んでいた人が風邪をひいた場合は、

それまで飲んでいた漢方薬をいったんお休みして、
風邪のための漢方薬をのむことになります。

それは、風邪をひいたときの<今の>体の状態といつもの体の状態が違うからです。

漢方的な考え方で、<証>がかわるといいます。

こちらの患者さんが風邪をひく前にいつも飲んでいる漢方薬は、
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)でした。

今回で風邪の漢方薬をのむのはおしまいにして、
いつもの半夏厚朴湯に戻ることになりました。

「まだ、風邪がすっきりなおっていないです。
なのに、風邪の薬でなくて、いつもの漢方薬に戻っても大丈夫でしょうか?」
ちょっと不安そうな患者さん。

この患者さんにとっては、
半夏厚朴湯は<風邪>の漢方薬ではなく、
<不安やイライラをともなう更年期症状や体質をよくしていくための>漢方薬でした。

なので、まだ風邪の症状が残っているのに
いつもの漢方薬にもどるのが腑に落ちなかったんですね。

確かに、風邪の漢方薬といえば、
葛根湯や小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が有名ですよね。

そこで、半夏厚朴湯の使われ方についてご説明しました。

半夏厚朴湯は、葛根湯や小青竜湯のように
いわゆる<風邪薬>としてはメジャーではないけれども、
のどのあたりがすっきりしない、咳が残るというときに使われることもある漢方薬です。

ちなみに、半夏厚朴湯は、
風邪薬としては、風邪のなおりかけですっきりしない時に使うことが多いので、
風邪のひきはじめの葛根湯と半夏厚朴湯を一緒に飲むことはないです。

ただ、半夏厚朴湯を体質改善的に飲んでいて、
頭痛や肩こりで一時的に葛根湯を飲むということはあるとおもいます。

半夏厚朴湯は、<気>の流れをよくするはたらきがあります。

からだの中で<気>の流れが滞ると・・・

のどのあたりの違和感、
痰がつまった感じ、
コホンと咳払いする感じ、
胸のつかえ

このようなトラブルにつながることが多いです。

なので、
なんとなくすっきりしない風邪、
胃の不快感、
不安やストレス、
更年期障害、

こういういろいろな症状に、<気>の巡りをよくすることで、半夏厚朴湯は効いてきます。

by カエレバ

「同じ漢方薬でも、いろいろな使われ方があるんですね!」
患者さんも、納得して安心されたようでした。

おだやかな精神安定剤としても、
咳やのどの違和感が残る風邪にも使われる半夏厚朴湯。

とても使い勝手のよい漢方薬のひとつです。