「咳や痰が続いている」
「風邪が治ったのに、咳だけがなかなか止まらない」
そんなお悩みはありませんか?
季節の変わり目や体力・気力が落ちているときには、「咳や痰がなかなか治らない」というご相談がよくあります。
西洋薬は、咳や痰をその時だけ<一時的に>やわらげる、そんな対処療法的なものが一般的です。
漢方薬は、咳や痰をただおさえるだけでなく、咳が出る体の根本原因にはたらきかけます。
今回は、風邪の長引く咳や痰に効く漢方薬について、ドラックストアや薬局で買える市販の漢方薬を中心に漢方薬剤師みゆきがわかりやすく解説します。

・長引く咳で困っている方
・咳や痰が止まらないと不安な方
目次
1.乾いた咳・のどの乾燥:麦門冬湯(ばくもんどうとう、29番)

麦門冬湯とはどのような咳に効く漢方薬?
✔️風邪の治りかけで空咳・乾いた咳が続く、発作性の咳
✔️のどが乾燥する
✔️痰は少ない、もしくは、痰がきれにくい
体(とくに呼吸器)の「潤い」が不足しているタイプ。
麦門冬湯は、のどや気道粘膜にうるおいをあたえて、乾いた咳を鎮めてくれます。
この麦門冬湯(ばくもんどうとう)という漢方薬は咳の漢方として有名です。
麦門冬湯は、名前にもなっている<麦門冬>という生薬がメインで、咳をとめたり、痰をきるはたらきがあります。
空気が乾燥すると、のども乾燥しやすくなります。
のどの粘膜の表面が乾いてしまうと、ちょっとした刺激に敏感になって、ダメージをうけやすくなります。
そして、咳やのどの痛みがおきてしまうんですね。
「コンコン」という乾燥からくる乾いた咳を麦門冬湯は鎮めます。
麦門冬湯の飲み方
麦門冬湯は、西洋薬の咳止め感覚で飲む、咳がひどい時だけ頓服で1包飲んでも効果的です。
体質改善的に長く飲むのではなく、咳がひどい時だけ飲むことが多いです。
数日分あれば十分足りるでしょう。
そういう場合は、市販薬を活用するのもおすすめです。
麦門冬湯は、市販薬としても販売されています。
薬局やドラックストアでも購入できるので、病院を受診せずに購入してすぐに飲むことができます。
満量処方(医療用と同じ成分量)がある場合は、そちらを選ぶと効果的です。
■市販の満量処方の麦門冬湯(ニタンダ)
↑私は近所のドラックストアで売っていたこの麦門冬湯を子ども(高校生)の咳に購入しました。
風邪の治りかけの咳に効果的でしたよ!
■市販の満量処方の麦門冬湯(坂本漢方)
*漢方薬の成分表についてはこちらのブログ記事に詳しく書いています。
病院で処方される医療用漢方薬と薬局で買う一般用漢方薬の中身の違い

3.4.激しい咳や痰、ゼーゼーする:五虎湯(ごことう、95番)・麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう、55番)

五虎湯や麻杏甘石湯とはどのような咳に効く漢方薬?
✔️激しい咳、咳込む
✔️気管支がゼーゼーする(喘息のような咳)
✔️痰が粘る
体の中に過剰な熱がこもった状態です。
五虎湯も麻杏甘石湯も、肺の潤いをうばってしまう過剰な熱をさますはたらきがあります。
また、麻黄を含むため、気管支の痙攣を鎮めて呼吸を楽にする働きもあります。
■麻杏甘石湯+桑白皮(そうはくひ)=五虎湯です。
桑白皮は、くわの根の皮。
咳をしずめるはたらきがあります。
五虎湯の方が、麻杏甘石湯よりもパワフルと考えてもOKです。
風邪の咳だけでなく、気管支ぜんそくや夜ぐっすり眠れないほど咳き込んでしまうときにもよいです。
吸入薬と漢方の併用も可能です。
五虎湯や麻杏甘石湯の飲み方
五虎湯や麻杏甘石湯は、激しい咳の時だけ1回服用という飲み方よりは、咳や痰の症状がある時は、用法通りに1日2~3回服用するようにしましょう。
■市販の麻杏甘石湯:JPS製薬(医療用の4/5量)
市販の麻杏甘石湯はJPSのが成分量が多くておすすめです。
有名メーカーのクラシエやツムラの市販の麻杏甘石湯は、医療用の1/2量で少なめとなっています。

医療用の1/2量と少なめです。
五虎湯はクラシエから医療用と同じ成分量のものが市販されています。
■市販の満量処方の五虎湯:クラシエ
私も以前、夜眠れないほどのひどい咳が長引いていた時、五虎湯を飲んで治った経験があります。
小学生くらいまで風邪をひく度にゼーゼーする咳をしていた長男は、麻杏甘石湯に何度も助けれました。
長男の咳は、日中よりも夜に悪化することが多かったので、
「寝る前に半分飲んで、夜中に咳こんで起きたときに残りの半分を飲む」
こんな風な飲み方もしていました。
4.ひどい咳や痰で眠れない:竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう、91番)

竹茹温胆湯はどんな漢方薬?
✔️咳や痰がひどくて夜眠れない
✔️インフルエンザ(やコロナ)後の治りかけで咳や痰、微熱が続く
✔️イライラ
インフルエンザや風邪で胃腸の働きが低下し、体(肺)に余分な水分が溜まって咳や痰がでる状態。
竹じょ温胆湯は胃腸や肺の負担になる余分な水をとりのぞいて咳や痰を治し、神経の高ぶりを鎮めます。

竹茹温胆湯の飲み方
竹じょ温胆湯は、激しい咳の時だけ1回服用という飲み方よりは、咳や痰の症状がある時は、用法通りに1日2~3回服用するようにしましょう。
私が調べたところ、市販薬はクラシエだけでした。
近所のドラックストアでは購入できず、ネット通販で購入しました。
■市販の竹じょ温胆湯:クラシエ(医療用より少し少ない量)
5.粘った痰が多く出る長引く咳:清肺湯(せいはいとう、90番)
清肺湯はどんな漢方薬?
✔️痰が多く出る咳
✔️粘性のある痰、痰がきれにくい
✔️風邪をひいてから2週間以上も咳や痰が長引いている
肺や気管支に過剰な熱がある状態。
清肺湯は、呼吸器を潤いを補いながら清熱します。
咳を鎮めたり痰をとるはたらきのある生薬も含み、粘りこい痰を出しやすくして、咳をやわらげます。
清肺湯の飲み方
清肺湯は、咳や痰の症状がある間、用法通りに1日2~3回服用するようにしましょう。
清肺湯として販売されているのは、ツムラのみ。
ツムラの市販の漢方薬は1日2回の服用というのが特徴です。
■市販の清肺湯:ツムラ(医療用の1/2量)
清肺湯は、小林製薬より「ダスモック」という名前でも市販されています。
タバコや排気ガスなどによる咳や痰が続く方むけという視点での販売となっているようです。
カタカナの名前ですが、中身は清肺湯と同じです。
15歳未満は使用できません。
ダス=出す、モック=排気ガスやタバコの煙のもくもくからくるネーミングのようです。
生薬量(成分量)は、医療用よりも少なめの1/2量です。
錠剤タイプなので、味や香りが苦手な方ものみやすく感じるかもしれません。
【症状・体質別】咳や痰に効く漢方薬の選び方・使い分け
ここまで、長引く咳や痰におすすめの漢方薬を5つご紹介してきました。
でも、実際に選ぶとなると「自分にはどれが合うんだろう?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
「長引く咳」といっても、人によって症状や体の状態はさまざまです。
ここでは、体質や咳のタイプ別に、どの漢方薬が合うかをわかりやすく一覧表にしました。
咳の特徴 | 体力の目安 | 漢方薬 | 特徴ポイント |
---|---|---|---|
乾いた咳・痰がきれない のどが乾燥する |
体力中等度以下 | 麦門冬湯 | のどや呼吸器を潤す |
咳こむ(ゼーゼー) 痰がからむ・呼吸が苦しい |
体力中等度以上 胃腸が弱い人は注意 |
麻杏甘石湯 | 咳を鎮める作用は強め |
咳こむ・痰がからむ・黄色い痰 呼吸が苦しい・のどイガイガ |
体力中等度以上 胃腸が弱い人は注意 |
五虎湯 | 麻杏甘石湯+桑白皮 (より咳に特化) |
咳や痰で夜眠れない イライラや不安など精神症状 |
体力中等度 or 抵抗力が低下 |
竹茹温胆湯 | 咳・痰+精神症状を鎮める |
咳も痰もひどい 粘り気のある黄色い痰 |
体力中等度 | 清肺湯 | 肺(呼吸器)の熱を冷ます |
のどのケアにもおすすめ:漢方トローチ

咳だけでなく、のどのイガイガや違和感が気になる方には、気軽に使える【漢方トローチ】もおすすめです!
今回ご紹介した麦門冬湯もトローチ製剤もあるんです。
詳しくは、市販の漢方トローチ3種を徹底比較!喉の痛み・咳におすすめの選び方の記事を参考にしてくださいね。
早めの漢方薬で長引く咳をケア!
長引く咳や痰でつらい時に役立つドラックストアや薬局で買える市販の漢方薬を症状のタイプ別に5つご紹介しました。
長引く咳や痰に使われる漢方薬は、他にもいろいろありますが、この5種類の漢方薬は、ドラックストアや薬局でも買うこともできます。
(といっても、お店の品揃え次第でちょっと違うかもしれませんが)
咳のタイプにあった漢方薬を飲むと、長引くつらい咳や痰もかなりやわらぎます。
インフルエンザや風邪の熱もさがって、風邪の治りかけ。
だけど、なかなか咳だけがなおらない。
この長引く咳って、なかなかのくせものです。
熱が下がって咳だけになると、そのうち治ると放置しがちです。
長引く咳で、体も心も疲れきってしまう前に、漢方薬を上手に使って治していきましょう。
*漢方薬をしばらく服用しても咳がおさまらないときは、肺炎などの疑いもあります。
その場合は受診するようにしてくださいね!
