こんにちは。
ママのためのやさしい漢方 薬剤師の清水 みゆきです。
「些細なことが気になってすぐに不安になる」
「何もないのに喉がつかえた感じが続く」
そんなときにぜひ試してほしい漢方薬、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)について、この記事では解説します。
目次
喉のつかえや不安感が強い時にオススメの漢方薬、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう、16番)

半夏厚朴湯はどんな効果がある漢方薬?
喉に何かつまっているようなつかえ感が続く、
気分がふさぎがち、
不安感とともに動悸やめまいもする、
そういう時に使われる漢方薬に、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)があります。
気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症
不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症
名前にもついている半夏(はんげ)と厚朴(こうぼく)
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茯苓(ぶくりょう)、蘇葉(そよう)、生姜(しょうきょう)です。
生薬のはたらきからみていくと、
半夏、厚朴、蘇葉、生姜は、気(生命エネルギー)の巡りをよくして、自律神経の乱れを整えるはたらきがあります。
茯苓は、水の滞りを解消すると同時に、精神を安定させるはたらきがあります。
また、半夏と厚朴は、咳や痰といった呼吸器の不調や胃の調子を整えるはたらきがあります。
気の巡りが悪くなると、
必要な気がからだのすみずみまで行き渡らない、気が内側にこもって行き場をなくしてしまい、
不安感として表れます。
気のバランスの崩れは精神症状を引き起こすと考えられています。
そこに、心配事やストレス、疲れが重なると、
ますます気の巡りが悪くなって不安感が増すという悪循環になってしまいます。
気分がふさぎがちになる、
取り越し苦労が多い、
だるい、
気力がでない、
イライラする、
ため息ばかりでる、
こういう不調が表れやすいです。
また、気の巡りが滞ると、お腹がはる、げっぷばかり出るという方もいます。
水の巡りも悪くなり、胃に余分な水が停滞して吐き気などの不調を引き起こす場合もあります。
半夏厚朴湯は、気の巡りをよくして不安を改善する漢方薬です。
さらに、気の滞りを解消しながら、水の巡りもよくするので吐き気やめまい、お腹のはりなどの改善も期待できます。
とくに、半夏厚朴湯といえば、「喉のつかえや違和感」によく使われます。
詳しくお話ししていきますね。
半夏厚朴湯は喉のつかえや異物感によく使われる!
「喉に何かつまっているような異物感が続く」
「喉のつかえがとれない」
「飲み込みにくい」
このような不調があるものに、喉や食道の検査では異常がない、
そういう場合は、咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)、ヒステリー球といいます。
漢方的には、梅核気(ばいかくき;梅の種が喉にひっかかっている感じ)ともいいます。
胸から喉にかけて気が滞ることで、起きると考えられています。
とくに、女性に多く、ストレスや緊張で悪化しやすいという特徴があります。
半夏厚朴湯は、気の巡りを改善することで、喉のつかえや苦しさを和らげます。
実際に、勤務先の薬局でも
「半夏厚朴湯を飲み始めてから、喉の嫌な感じが和らいだ」
という声をよく聞きます。
喉に違和感を感じる、ストレスや疲れると悪化するという方は、ぜひ半夏厚朴湯を試してほしいです。

半夏厚朴湯の飲み合わせは?
漢方薬の飲み合わせを考える時には、とくに生薬の甘草の重複が問題になることが多いです。
甘草でむくみや血圧上昇などの副作用が出やすいからです。

その点、半夏厚朴湯は甘草を含まない漢方薬ですので甘草の重複による副作用発現は問題ありません。
ただ、他の生薬や作用が重複することがあるので、もし2種類以上の漢方薬を服用する場合は、医師や薬剤師に相談するようにしてください。

半夏厚朴湯+茯苓飲=茯苓飲合半夏厚朴湯
半夏厚朴湯+小柴胡湯=柴苓湯というように別の漢方薬になることもあります。
素人判断で組み合わせるのは危険です。
必ず、専門家に相談してくださいね。
また、医療用の薬(睡眠薬や精神安定剤など)と飲み合わせについては、とくに問題はありません。
(医療用の添付文書に記載ありません)
半夏厚朴湯は長期服用してもいい?
半夏厚朴湯に限らず、気になる症状や不調がなくなれば漢方薬をやめても問題ありません。
漢方薬のやめどきについては、漢方薬をやめるタイミング、いつまで飲むのを続けた方がいいですか?を参考にしてください。
ただし、構成生薬や勤務先の薬局での症例を見る限り、半夏厚朴湯を長期服用しても問題ないと私は考えます。
半夏厚朴湯の市販薬に処方の違いはあるの?
半夏厚朴湯は市販されているので、薬局やドラックストアでも買うことができます。
ツムラもクラシエも、市販の半夏厚朴湯は、医療用の半夏厚朴湯の半分量(1/2量)です。
ただし、飲む量(用法用量)に違いがあり、
ツムラは1日2回、クラシエは1日3回飲んで、同じ1日量の漢方薬となります。

1日2回タイプのツムラの半夏厚朴湯の方が続けやすいかなと個人的には思います。
・ツムラの半夏厚朴湯(粉薬)
・クラシエの半夏厚朴湯(粉薬)
クラシエの半夏厚朴湯には、錠剤タイプもあります。
・クラシエの半夏厚朴湯(錠剤)
粉薬は苦手という方には、錠剤タイプは飲みやすくていいですね。
1回4錠を1日3回服用です。

半夏厚朴湯があっていないことも考えられますが、
生薬の量が足りない(医療用の半分量なので)という可能性もあります。
受診の際には、市販薬を試してみたことも医師にお話しするとよいと思います。
さいごに:薬局で買える漢方薬の半夏厚朴湯は不安感や喉のつかえにおすすめ!
というわけで、
不安感が強い、考えすぎて不安になるというメンタル的な不調、
喉のつかえがとれない、緊張すると咳払いがとまらない、
そんなときにぜひ試してほしい漢方薬、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)について、お話ししてきました。
半夏厚朴湯は副作用リスクも低く、飲み合わせの心配もない使いやすい漢方薬のひとつです。
検査で異常はないけれど、不快な症状が続く時に一度試してみる価値はあると思います。
炎症のない痰がからむ咳(神経性の咳)
呑気症(空気を飲み込むことでお腹のはりやげっぷが続く)にも、半夏厚朴湯は使われます。